この記事は、ハリーポッターシリーズの映画・原作のネタバレを含みます。
未鑑賞の方はご注意ください。
『ハリー・ポッターと死の秘宝』で、ハリー・ロン・ハーマイオニーが分霊箱探しの旅をしている途中、人さらいに捕まってしまい、3人はマルフォイの館へ連れていかれます
もしハリーが捕まったことがヴォルデモートに知れれば、いっかんの終わりです
しかし、ハーマイオニーが咄嗟にかけた『蜂刺しの呪い』のおかげで、ハリーの顔は誰だかわからない程に腫れていました
ハリーであるという確証が欲しいマルフォイ夫妻は、ホグワーツでハリーと同学年だったドラコに顔を確認させます
ドラコは何年もハリーを近くで見てきましたし、ロンやハーマイオニーと一緒であることからしても、ハリーであるとわかっていたはずです
しかしドラコは、ハリーかどうか分からないと答えました
なぜこの時ドラコは、ハリーを助けるような行動をとったのでしょうか?
すぐに判断を下さないのは賢い選択である
まず前提として言いたいのは、ドラコがハリーの正体を断定しなかったのは、賢明な判断であるということです
マルフォイたちは決して焦る必要はありません
ハリーたちは杖を取り上げられ、姿くらましをすることもできないので、逃げることはまず無理です
(結果的に屋敷しもべ妖精が助けに来るという、思いもがけない方法でハリーたちは脱出しますが、そんなことが起こるとはマルフォイたちは夢にも思わなかったでしょう)
なので彼らは、ゆっくり時間をかけてハリーである確証を得てから、ヴォルデモートを呼べばいいのです
もし間違えば、確実にヴォルデモートの逆鱗に触れます
それにハリーの顔は、本人さえも自分だとわからないほどに、呪いによって歪められていました
ハーマイオニーの呪いで、顔はふくれ上がり、ピンク色にテカテカ光って、顔の特徴がすべて歪められていた。黒い髪は肩まで伸び、顎の周りにはうっすらとひげが生えている。そこに立っているのが自分だと知らなければ、自分のメガネを掛けているのは誰かと訝ったことだろう。
出典:『ハリー・ポッターと死の秘宝』原作小説より
なので、ドラコが本当にハリーであるという確信を持っていたかどうかは怪しいところです
100%ハリーであるという自信がない限りは、焦ってヴォルデモートを呼ぶことは賢明ではないと言えるでしょう
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恐怖がドラコにそうさせた
とはいえ、ドラコがハリーだと言わなかったのは、それだけが理由ではないと私は思います
ハリーをヴォルデモートに引き渡すこと、それはつまりハリーたちが殺されることを意味します
ドラコはたしかにハリーのことを妬み嫌っていましたが、ハリーの死を望んでいるわけではありません
6年生の時にした経験から、ドラコは人の死に関わることを恐れるようになりました
それは、ドラコがヴォルデモートにダンブルドアの殺害を命じられた時のことです
ダンブルドアの代わりに、危うくケイティとロンを殺しそうになり、ドラコは殺人に対して嫌悪感を持っていることに気づきます
殺人を犯すことへの恐怖と、失敗すれば自分が殺されることへの恐怖で、ドラコは板挟みになり泣いてばかりいました
そしていざ丸腰のダンブルドアを前にした時も、ドラコは恐怖のあまり手を下すことはできませんでした
さらに、その後マルフォイの館で起こった出来事も、ドラコの死に対する恐怖を増幅させました
マグル学の教師が、目の前でヴォルデモートに殺されたのです
マグル学の教師なんて、純血主義のドラコは真っ先に軽蔑し毛嫌いしたであろう人物ですが、彼女が殺された時、彼の表情は恐怖で満ちていました
ハリーに対しても同じです。いくらハリーのことを嫌っていても、顔見知りの人物が目の前で殺されるのにドラコはこれ以上耐えられなかったのです
殺人者ではないが、ヒーローでもない
この時、ドラコはハリーの命の恩人のようにも見えますが、ドラコは決して意図的にハリーを救おうとしたわけではありません
マルフォイ一家の人間が気にかけているのは、常に自分たちの身の安全だけです
最後には、ドラコが改心してハリーと共闘することを期待していた人も少なくないと思います
しかし彼は、ヴォルデモートほど邪悪ではないものの、善人でもありません
結局ヴォルデモートにもハリーにも味方しないというマルフォイ一家のラストは、彼らのどっちつかずの特性を象徴していると思います
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