この記事は作品のネタバレになる内容を含みます。本編を未鑑賞の方はご注意ください。
Contents
・願いの星を求めるキャラクターたち
『長ぐつをはいたネコと9つの命』の原題は、『Puss in Boots: The Last Wish』で、サブタイトルは『最後の願い』となっています
そのタイトルの通り、キャラクターたちはそれぞれ叶えたい願い事を持っています
・プスの願い
主人公の長ぐつをはいたネコ=プスは、9つあった命が残り1つになってしまい、今まで感じたことのない『死の恐怖』が彼を襲います
戦うことが急に恐ろしくなったプスは逃げ出します。そして家ネコとして安全に暮らすことを選びますが、生きがいを失った彼は抜け殻のようです
恐れ知らずの伝説のヒーローであった自分を取り戻すために、9つの命を再び得ること。これがプスの願いです
・キティの願い
キティは、今まで何度も裏切られてきた経験から、誰も信頼することができません
キティ・ソフトポーズ(日本語訳は”フワフワーテ”)の名前の由来にもなっている通り、彼女は過去に自分を飼っていた人たちに爪を抜かれてしまいました
恋人だったプスのことも、どうせ彼は自分より伝説を愛していると考えてしまい、信頼できません
実際、結婚式でプスは冒険の方を優先し、キティは裏切られるのを恐れて教会に行けませんでした
なので、キティの願いは、心から信頼できる人に出会うことです
・ゴルディの願い
ゴルディは三匹のクマと家族のように行動を共にしていますが、彼女だけがクマではないため、疎外感を感じています
そして、彼女は元々孤児だったこともあり、子供の頃から本物の家族を持つことに憧れていました
なので、ゴルディの願いは、クマではなく人間の、本物の家族を持つことです
・願いを持っていないペリート(ワンコ)
キャラクターたちがそれぞれ願いを持ち、それを叶えるのに必死になっているのと対照的に、ペリートは何も叶えたい願いがないと言います
ペリートは、今自分が置かれている境遇に、満足しているのです
なぜでしょうか? ペリートが恵まれた環境にいるからでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。彼はまともな名前すら持っていません
それに、食べ物を得るのにも一苦労です。彼は自分を偽ってネコにならなければいけませんでした
それだけでなく、彼は非常に悲しい過去を持っています
彼の家族は、なんと彼を石と一緒に靴下の中に入れ、川に放り投げたのです
靴下に穴を開け、彼はなんとか生き延びましたが、死んでしまってもおかしくありませんでした
キティはこの話を聞いて、今まで聞いた中で一番悲しい話だと言います
しかしペリートは、この話を笑い話だと考えています
彼にとっては、ただ家族とかくれんぼをしていただけで、靴下がセーターになったから、むしろ得をしたとさえ思っています
不思議なことに、彼は自分が受けた残酷な仕打ちを、少しも悲観的に捉えていないのです
『それはこのイヌがとんでもなくバカだからだ』と考える人もいるでしょう
たしかにペリートの考え方は楽観的すぎるかもしれません
しかし、ペリートから学べるのは、自分に何が起こったかではなく、自分がそれにどう反応するかが重要であるということです。
キティは、飼い主に爪を抜かれたことで、誰も信頼できなくなってしまいました
対してペリートは、その何倍もひどい仕打ちを受けたにも関わらず、出会ったばかりのキティを信じると言います
二人とも悲しいことが起こったのは同じでも、それをどう捉えるかで大きな違いが生まれるのです
・地図が意味するもの
3人が地図にふれた時も、不思議なことが起こります
プスとキティが地図にふれた時には、『業火の谷』や『悲しみの沼』といった、とてつもなく険しい道のりが用意されます
しかしペリートが地図に触れると、『バラの窪地』や『くつろぎの川』など、簡単に願い星に辿り着ける道に変化したのです
できるだけ早く願い星にたどり着くため、ペリートに地図を持たせて進んでいくと、巨大なバラが3人の前に立ちはだかります
願い星にたどり着くことに夢中なプスとキティは、バラを障害物としか考えておらず、バラに跳ね飛ばされてしまいます
対して、願い星に興味がないペリートは、目の前のバラの香りを楽しむことで、バラに受け入れられ、道を切り開いていきます
プスとキティ、そしてゴルディもそうですが、彼らは持っていないものを手に入れることにフォーカスし、自分がすでに持っているものの価値に気づいていません
ペリートは持っていないものではなく、今持っているものにちゃんと目を向けています。セーターと二人の親友がいることです
立ち止まって、ただ目の前にあるものを楽しむのです
これが、ペリートと他のキャラクターとの決定的な違いです
ペリートはこのように考えられるからこそ、今の自分の人生に満足することができるのです
この考え方がいかに重要かは、この映画のラストを見れば分かります
・プスの気づき
プスは最終的に、9つの命よりも、キティやペリートと過ごすたった一つの命(人生)が重要であることに気がつきます
再びプスに死が迫ってきた時、彼が見た人生の走馬灯には、他の8つの人生の場面は一切無く、1つの人生の中の出来事で埋め尽くされていました
9つも命は必要ありませんでした。今持っている1つの命で十分だったのです
9つ命があったとしても、以前のプスのように無駄に浪費していたら、結局は死が訪れます
大事なのは、今ある命をあきらめないことです
・キティの気づき
キティの求めていたものは、心から信じられる相手でした
しかし、その人物はすでにキティの目の前にいました。プスです。
必要なのは、ただ彼と真に向き合うことだけでした
・ゴルディの気づき
ゴルディはずっと本物の家族を求めていました
しかしゴルディも、それをすでに手に入れていることに気づかされます
ゴルディの幸せを本気で願っている三匹のクマです
・ペリート=願い星?
プスもキティもゴルディも、求めていたものはすでに持っていたのです。ただそのことに気がつかなかっただけで。
最初からそれがわかっていたペリートは、3人のお手本になりました
3人はペリートの姿勢から学び、本当に大切なものの存在に気づいたのです
願いを叶えてくれる”願い星”とは、ペリートのことだったのかもしれませんね
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