アカデミー賞最多ノミネートで話題のミシェル・ヨー主演映画、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
この記事では、主人公のエヴリンの夫である『ウェイモンド』が真のヒーローと呼べる人物である理由について、話していきたいと思います
この記事は作品のネタバレになる内容を含みます。本編を未鑑賞の方はご注意ください。
頼りなく見えるウェイモンド
ウェイモンドは、典型的なヒーローと呼べるタイプの人物ではありません
彼はただのいい人で、戦うための特別な能力も、強さも持っていません
実際、ウェイモンドは好んで戦いに参加したりはせず、戦っているエヴリンを、ただ端から見守っているだけです
妻のエヴリンからしても、夫のウェイモンドは頼りない所があると感じています
戦うべき相手である監査官にクッキーを持っていったり、くだらない目をそこら中に貼り付けたり…
そんな時に、エヴリンの元に現れたのが、アルファバースからきたウェイモンドです
アルファウェイモンドとの対比
アルファウェイモンドは、元のウェイモンドにはない強さを持ち、立ちはだかる警官たちを次々と蹴散らしていきます
強いだけでなく、彼の言葉には説得力があり、頼れる男という雰囲気を感じます
まさにヒーローらしい人物です
エヴリンも、このアルファウェイモンドに魅力を感じ、心惹かれていきます
元のウェイモンドに戻った時、イヴリンはどこかガッカリしているように見えます
しかしアルファウェイモンドは、真にヒーローと呼べるような人物ではありませんでした
エヴリンが選ばれし者ではないと見限ったアルファウェイモンドは、あっさりと彼女を見捨てます
自分の目的達成のためなら、他はどうなろうと関係ないのです
これと対照的な行動を取ったのが、元のウェイモンドです
彼は、エヴリンが自暴自棄になり、全てを台無しにした時でさえ、彼女を思いやり、彼女のそばに居続けました
ウェイモンドは、エヴリンの気持ちを思いやり、自分が離婚の話をしたせいで彼女は大変な思いをしていると、監査官に言います
その優しさに監査官も心を動かされ、提出期限を1週間後に延ばしてくれます
『優しさを持って人に接する』これこそが、ウェイモンドなりの戦い方なのです
暴力に訴え、力で制圧するような、アルファウェイモンドの戦い方とは違います
ウェイモンドはそうやって、何度も困難を乗り越えてきました
その証拠に、エヴリンと結婚しなかった世界のウェイモンドは、ビジネスで成功を収めています
監査官にクッキーを持っていったのも、彼なりの戦略であり、優しさだったのです
ウェイモンドから学ぶエヴリン
ウェイモンドの優しさに触れたエヴリンは、ウェイモンドが決して弱い人間ではないことに気がつきます
そしてエヴリンは、彼の戦い方を学びます
暴力で相手を圧するやり方ではなく、人に優しくするやり方です
ウェイモンドは、その方が服が幸せそうだからと、服を2階へ移動させ、グーグルアイ(ギョロ目)を付けていました
そんなウェイモンドの服への思いやりを見習い、イヴリンはアルファバースの攻撃者たちに、グーグルアイを付けます
そして、ウェイモンドが監査官にクッキーを持っていって説得したのと同じように、イヴリンは相手の願望を次々と叶えていき、それに夢中にさせ、戦意を喪失させます
相手を殴って動けなくするより、ずっといい方法です
ジョイとの対峙
娘のジョイに対しても、エヴリンは力でではなく、優しさを持って向き合います
ジョイがエヴリンに対して戦闘態勢をとった時も、エヴリンはジョイを優しく包み込むように両手を広げます
そして、エヴリンは一度は彼女を行かせます。留まることを強制するのは、『優しさ』ではないからです
彼女がやったことは、『ただあなたと一緒にいたい』と伝えることでした
このエヴリンの行動は、ウェイモンドがエヴリンに離婚を提案したことと似ています
ウェイモンドが離婚を考えていたのは、彼がエヴリンのことを愛していないからではありません
愛しているからこそ、エヴリンが幸せそうではないのを見て、自分と一緒にいるべきではないのではと考えたのです
もちろん自分は一緒にいたいが、もしエヴリンがそうしたいならそうしていいと、選択肢を与えたのです
これはまさに、エヴリンがジョイにしてあげたことです
このように、エヴリンは常に、ウェイモンドの優しさから学び、それを戦いに生かしていたのです
ウェイモンドは、どん底だったエヴリンを救い出し、エヴリンを通してジョイをも救ったのです
これが、ウェイモンドが真のヒーローであると言える理由です
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