この記事は作品のネタバレになる内容を含みます。本編を未鑑賞の方はご注意ください。
ライリーの頭の中には5つの感情が存在しますが、その中でもリーダーシップをとり機械のコントロールを握っているのはヨロコビです
しかし、ライリーの両親の頭の中を見てみると、感情の中心にいるのはヨロコビではありません
母親の頭の中はカナシミ、父親の頭の中はイカリがリーダーシップをとっています
これは、ライリーの母親はうつ病に悩まされていたり、父親が怒りっぽい性格であることを示しているのでしょうか?
私はそうではないと思います
ライリーの母親は常に気分が落ち込んでいるようには見えませんし、父親も時には厳しく叱りますが基本的には穏やかな人に見えます
ではなぜ彼らの頭の中は、カナシミやイカリがリーダーシップをとっているのでしょうか?
その答えは、感情のそれぞれの役割を理解すれば見えてきます
カナシミの存在意義
ビビリは危険から身を守るため、ムカムカは有害なものを寄せ付けないため、イカリは公平性を保つためなど…
他の感情の役割は明確ですが、カナシミだけはその役割が映画の後半まで明らかになりません
このカナシミの役割というのは、映画全体を通して語られている重要なテーマでもあります
誰も自分から進んで悲しみたいと思う人なんていません
それでも人が悲しむのは、カナシミが人間にとって必要な感情だからです
ライリーの空想の友達であるビンボンのロケットが捨てられてしまった時
悲しみに暮れるビンボンに対し、ヨロコビは楽しいことを考えることでビンボンを無理やりハッピーにさせようとします
しかしこれは全く上手くいきません
なぜなら今のビンボンにはハッピーになれる理由なんてないからです
一方でカナシミはビンボンに対して真逆のアプローチをします
カナシミはビンボンの話を聞き、気持ちに共感し、一緒に悲しんであげました
そのおかげでビンボンは、結果的に気持ちが晴れて前に進むことができました
ここからヨロコビは、カナシミの存在意義に徐々に気づき始めていきます
さらに決定的だったのは、ライリーが両親に悲しみを打ち明けるシーンです
ライリーは引っ越しに不満を抱きながらも、両親のために無理やり幸せそうに振る舞っていました
しかしこれは、ビンボンの時と同じように何の解決にもなりませんでした
ここでも重要になるのはカナシミです
ライリーはミネソタに戻れない悲しみを両親に打ち明けることで、両親も同じくミネソタを恋しく思っていることがわかりました
カナシミの感情があったおかげで、両親はライリーの気持ちに共感し、慰めてあげることができたのです
カナシミの存在意義はここにあります
人は悲しむことで誰かからその気持ちに共感してもらえたり、助けてもらうことができます
逆に誰かが悲しんでいたら、その人の気持ちを理解し、優しくなることができます
これは悲しみの感情があるからこそできることです
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母親にとって重要な感情
カナシミの役割が”共感”であることがわかったところで、本題へ戻りましょう
ライリーのお母さんの頭の中は、なぜカナシミがリーダーなのでしょうか?
それは、”共感”が母親にとって必要な能力であるからだと思います
赤ちゃんが何かを訴える時、それらを悲しみで表現します
お腹すいた、オムツを変えてほしい、どこかが痛いなど、何か問題があるときに赤ちゃんは泣くことで伝えようとします
その悲しみに共感してくれるのが母親です
子供の悲しみの感情を真っ先に理解してあげるために、母親にとって共感力はとても重要です
だからこそライリーのお母さんの頭の中は、カナシミがコントロールを握っているのだと思います
父親にとって重要な感情
対して、ライリーのお父さんの頭の中の場合はどうでしょうか?
お父さんの感情のリーダーはイカリです
この感情もまた、父親の果たすべき役割と密接に関係していると思われます
冒頭でも説明されていた通り、怒りの感情は公平性を保つために存在します
ライリーを例にとると、ミネソタにいれば幸せだったのに引っ越すことを余儀なくされたり、ピザ屋にブロッコリーのピザ1種類しかなかったりと、不公平な状況に置かれると怒りが爆発します
父親には、家庭を守る責任があるのと同時に、ある程度の威厳を保ち、時には子供に厳しく接することも求められます
もし子供が両親に対して失礼な態度をとったり、好き勝手し始めた場合には、父親の怒りが飛びます
家の外でも、家族のために必死に働いているのに、その働きに見合わない給料を支払われたりしたら、怒らないわけにはいきません
このように、父親の怒りの感情は、家庭や職場の公平性を維持するために重要な役割を果たしているのです
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